14世紀フランスの詩人で作曲家ギヨーム・ド・マショーは、中世を通じて最も広く知られる作曲家の一人だ。彼は、シンコペーションやイソリズムといった複雑なリズム技法や革新的な記譜法に象徴されるアルス・ノヴァという新たな音楽様式を代表する作曲家だった。現存する楽曲の中で一人の作曲家がミサ通常文のすべてに曲を付けた最古の例として音楽史にその名を刻む代表作『Messe de Nostre Dame(ノートルダム・ミサ)』も、このアルス・ノヴァの技法を用いたものである。また聖職者でありながら世俗曲を多く遺したことも特徴の一つで、その中には、楽譜通りに頭から歌っても、終わりから始めに向かって歌っても同じ曲になるという実験的な作品「Ma fin est mon commencement(わが終わりはわが始まり)」も含まれる。