ベートーヴェンを尊敬し、シューマンやブラームスをはじめとするドイツ・ロマン派の作曲家たちの音楽を愛したこと。そして、同世代のラフマニノフの親友であったこと。20世紀前半に活躍したロシア出身の作曲家Nikolai Medtnerの音楽は、彼が持っていたこれらの音楽的嗜好(しこう)や交友関係からリスナーが想像し、期待するものを決して裏切らない。1880年にドイツ系の両親の下、モスクワで生まれたMedtnerは6歳でピアノを始め、12歳でモスクワ音楽院に入学。1900年にピアノ科の最優秀者に与えられる金メダルを取って卒業すると、ピアニストとしてキャリアをスタート。母校で教えながら、作曲も精力的に行っていく。ロシア革命の後はパリやロンドンで活動し、演奏旅行以外で祖国に戻ることはなかった。偉大なピアニストであった彼は、多くのピアノ独奏曲、ピアノ協奏曲、アンサンブルにピアノを含む室内楽曲、ピアノ伴奏の歌曲などを遺している。ショパンがそうであったように、ピアノという楽器との密接な関係から生まれたMedtnerの作品は、輝くようなピアノの響きを存分に生かしたものであり、また、その情感にあふれた美しいメロディと豊かなハーモニーは、時代を越えてリスナーの心を揺さぶる普遍的な魅力を放っている。