作曲と演奏が分業化した20世紀以降の音楽界において、双方で世界的に活躍したピエール・ブーレーズ。1925年にフランスで生まれた彼は、パリでメシアンらに作曲を師事。早くから頭角を現した。その後、ドビュッシーやストラヴィンスキーを再評価する中で、指揮も開始。驚異的な耳と記憶力に裏打ちされた解釈は、作品が複雑になるほど緻密さと精彩さを増していった。中でも、明晰な音色と構築を示したストラヴィンスキーの“Le Sacre du Printemps”は、その最たる成果。晩年はそこにユーモアやエスプリの笑みをも覗かせていた。2016年1月に逝去したが、そうした在り方は、彼がさらなる最先端を模索し続けていたことを窺わせる。ここでは、彼の遺した数々の名作の中から、指揮者として活躍した作品を中心に紹介する。