わが祖国

JB 1:112、T110、T111、T113、T114、T120、T121

『Má vlast(わが祖国)』は、スメタナが故郷であるボヘミアにささげた六つの楽曲から成る連作交響詩で、ワーグナーやリストといったロマン派の作曲家たちからの影響と、色彩豊かなチェコ国民楽派のスタイルが融合された作品となっている。スメタナは1874年の秋までに、作曲家として、また指揮者として、チェコ語によるオペラの様式をほぼ独力で築き上げた。ところがそのころ難聴を発症してしまい、プラハの仮劇場(国民劇場が完成するまで使われていた仮設の劇場)の首席指揮者を辞することになる。しかし彼は、『Má vlast』の最初の2曲を急ピッチで書き上げることで、この絶望的な状況に打ち勝ったのだ。その2曲とは、プラハを流れるヴルタヴァ(モルダウ)川のほとりにそびえ立つヴィシェフラド城の激動の歴史を描いた第1曲「Vyšehrad(ヴィシェフラト)」、そして、ボヘミアの田園地帯を流れるヴルタヴァ川の首都に向かう雄大な流れを魅惑的に描いた第2曲「Vltava」である。そして、他の4曲は1879年までに完成した。チェコの伝説に登場する女性戦士のエピソードを描いた第3曲「Šárka(シャールカ)」に続くのは、「Z českých luhů a hájů(ボヘミアの森と草原から)」と題された歓喜に満ちた音の風景画だ。第5曲は、15世紀にフス派の戦士たちが築いた街にちなんだ「Tábor(ターボル)」(プロテスタントの賛美歌を引用している)。そして最後は丘の名前から取られたタイトルを持つ「Blaník(ブラニーク)」だ。この丘の下には、チェコが危険に直面したときに再び立ち上がるとされる、聖ヴァーツラフが率いた軍隊が眠っているという伝説がある。1882年にプラハで行われた『Má vlast』の全曲初演は大成功を収め、すぐにチェコの国民的名曲としての地位を確立した。また「Vyšehrad(ヴィシェフラト)」と「Vltava(ヴルタヴァ)」は、独立した楽曲として演奏される機会も多く、世界中で広く愛されている。

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