- エディターのおすすめ
- 2012、64トラック、2時間 28分
カルメン
WD31、GB9
ジョルジュ・ビゼーの『カルメン』が現代において最も人気のあるオペラの一つであることに議論の余地はないが、最初から支持されていたのかというと、そうではなかった。1875年にパリのオペラ゠コミック座で行われた初演は成功とは程遠い結果に終わり、ビゼーはその3か月後に心臓発作を起こしてこの世を去っている。19世紀フランスの作家プロスペル・メリメの小説に基づいたこの歌劇の内容は、当時のオーディエンスにとって受け入れにくいものだった。オペラにおけるメインキャラクターは神や貴族というのが当たり前の時代に、『カルメン』の登場人物たちは庶民。性に奔放な労働者の主人公と、彼女に誘惑された男たちや小悪党たちが躍動するステージに、パリのオペラファンは嫌悪感を覚えたのだ。しかし、ビゼーによるとてつもなく素晴らしい音楽はこの逆境をはね返すのに十分な力を持っており、『カルメン』はすぐに世界のオペラハウスを席巻する人気作品となった。この奇跡のようなオペラにおいては、強烈なインパクトを与える前奏曲、カルメンの「ハバネラ」、エスカミーリョの「闘牛士の歌」をはじめとするすべての曲が、驚くほど高いレベルのメロディを輝かせているのだ。一方、#MeToo運動も巻き起こった現代においては、男に付きまとわれている女性が最後にはその男に殺されるというストーリーが新たな議論を呼ぶかとも思われたが、演出家たちはジェンダー平等を推進する21世紀の社会を反映しながらこのオペラの魅力を表現する方法を見つけ出している。