交響曲第3番 ニ短調

2作続けて合唱を伴う大規模な交響曲を書いた作曲家は、今のところグスタフ・マーラーだけだ。しかし彼は同じことを繰り返したわけではない。マーラーにとって最初の合唱付きの交響曲である『交響曲第2番』は、強烈なまでに人間臭い、切迫感に突き動かされるようなストーリーを語るものであり、荒漠とした死のビジョンから始まって、復活を宣言する合唱へと進んで行くものだった。一方、まるで巨大な絵巻物のような作品である『交響曲第3番』(1896年)は、それ以前に作曲されたすべての交響楽の楽章の中で最も長大で、そして際立って奇妙な雰囲気をまとった第1楽章で幕を開ける。ここでは、マーラーが愛したアルプスの荘厳な高みと広大な風景といった大自然のエレメントが、次第に騒々しく、濃密なテクスチャの行進曲(マーラーはこれを“春の入場行進”と呼んでいた)へと姿を変えていく。その後には比較的短い四つの楽章が続く。愛らしい花を思わせるような舞曲である第2楽章の後には、快活でいながら時折驚くほど繊細な表現を見せ、また遠くから呼びかけるようなポストホルンも印象的な第3楽章「スケルツォ」が続き、第4楽章ではニーチェの文章に曲を付けた、人生の本質的な謎についての夜の聖歌ともいうべき魅惑的な曲がアルトと小オーケストラによって奏でられ、第5楽章では児童合唱によって、キリストを裏切ったが許されたペテロの物語が歌われる。そして終楽章はオーケストラだけで奏でられる美しい「アダージョ」となっており、苦悩の時を乗り越えて、最後にはまばゆいほどに輝く賛歌となって幕を閉じる。マーラーは当初この交響曲に標題を付けようと考えており、実際に全体のタイトルと、楽章ごとのタイトルを付けていたのだが、最終的にはこれらを削除し、作品の解釈を聴衆に委ねることにした。これは賢明な判断だったといえるだろう。結局マーラーは、『交響曲第3番』とは命なき自然から神の愛への“高まり”を表現したものだ、とだけ語っている。

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