くるみ割り人形
Op. 71、TH 14
ファミリーで楽しめるクリスマスの定番として広く親しまれているチャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』(1892年)は、まず演奏会用の組曲版として人気を博した。一方、一幕物のオペラ『Iolanta』との2本立てで初演されたバレエ版は大きな注目を集めることができなかった。この喜びにあふれたバレエ音楽の並外れて高いクオリティが正当な評価を受けるには、1930年代にAlicia MarkovaとMargot Fonteynを迎えてロンドンで行われた、ロシア国外での初めての公演が称賛されるのを待つことになる。チャイコフスキーはこの作品が若い観客にも楽しんでもらえるよう、上演時間を90分に抑えている。これは『眠れる森の美女』や『白鳥の湖』の約半分の長さだが、この中には、「こんぺい糖の踊り」で聴くことができる当時最新の楽器チェレスタの不思議な音色や、くるみ割り人形が率いるブリキの兵隊とねずみの王様の軍隊の“熱狂的な小競り合い”など、心が躍る多彩な仕掛けが盛り込まれている。バレエの物語は、クリスマスイブに少女クララの家で開かれているパーティーから始まる。来客の人形使いドロッセルマイヤーは、クララにおもちゃの兵隊の形をしたくるみ割り人形をプレゼントする。みんなが寝静まった頃、人形のことが気になったクララがこっそり階下に降りると、すべてのおもちゃに命が吹き込まれる。突如現れたねずみの軍隊との戦いを終えるとくるみ割り人形はハンサムな王子に変身し、クララをお菓子の国へと招く。さまざまな踊りに彩られた歓迎の宴が催され、クララは夢のようなひと時を過ごすのだった。
