幻想的小品集

Op.  3

「前奏曲嬰ハ短調」は、5曲で構成されるソロピアノのための曲集『幻想小品集』の中でセルゲイ・ラフマニノフが最初に書いた曲であると同時に、キャリアを通じて幾度となくアンコールで演奏することを求められた人気曲だ。しかし、この『小品集』の中には、その「前奏曲」の底に流れる陰鬱(いんうつ)さと嵐のようなクライマックス以外にも、たくさんの魅力がある。作曲時、ラフマニノフはまだ19歳だったが、同曲集は非常に幅広い感情表現にあふれた作品となっており、1893年に出版された後にこの作品を目にしたチャイコフスキーにも大きな感銘を与えたと伝えられている。冒頭の「悲歌(エレジー)」は、深いメランコリーに包まれたメロディと穏やかなアルペジオから成り、思慕の情にあふれた第3曲「メロディ」は、夢見心地でロマンチック。第4曲「道化役者」は、遊び心たっぷりだ。そして、ラフマニノフがとある批評家から「ロシアの若い世代の作曲家の中で突出した才能」と称賛されたことに勢いを得て書いた第5曲「セレナーデ」は、軽やかな高揚感に満ちている。

関連作品