交響曲第38番 ニ長調

K. 504、KV 504、“プラハ”

歌劇『フィガロの結婚』がプラハで大ヒットしたことをきっかけに作曲された『交響曲第38番』は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの自信と意欲が前面に表れた作品だ。この交響曲は、喜歌劇的なウィットとエネルギーにあふれていながら、『フィガロ』に続くオペラである『ドン・ジョヴァンニ』の、よりシリアスな世界をも予感させる。1786年末にモーツァルトは、1787年1月にプラハで開かれるコンサートで披露するため、同交響曲を作曲した。遺されたスケッチの数から、彼はこの作品にかなりの労力を費やしたと考えられている。“プラハ”というニックネームでも知られる『交響曲第38番』の「第1楽章」は、『ドン・ジョヴァンニ』のニ短調の序曲における抑揚とシンコペーションを先取りした、力強い「アダージョ」で幕を開ける。しかし、その厳粛なムードは、『フィガロ』から受け継いだコミカルな展開と対位法的で重厚なテクスチャーを有する「アレグロ」によって一気に取り払われる。牧歌的な「アダージョ」である「第2楽章」は、まるで二つの嵐の間にあるオアシスのような存在となっている。終楽章の「プレスト」では、再び喜歌劇的な世界が展開されるが、実際にこの曲は『フィガロ』の二重唱「開けて、早く、お開けなさい」のモチーフに基づいている。