シャルル=オーギュスト・ド・ベリオの親しみやすく気品にあふれた音世界を現代によみがえらせる、オーセンティックなパフォーマンス。19世紀前半に活躍したベルギー出身のヴァイオリニスト/作曲家である彼は、当時のトップヴァイオリニストの一人としてヨーロッパ各地で大きな人気を博した。作曲家としての彼の作品も、得意のヴァイオリンを生かしたものが多い。それらの曲には多彩な演奏技術が盛り込まれていて、現在では教育現場でもよく使われているが、演奏会や録音で取り上げられる機会は少ない。本作でソリストを務める辻彩奈は、2016年のモントリオール国際音楽コンクールにおいて18歳で第1位となり、注目を集めたヴァイオリニスト。これまでに国内外のオーケストラや、日本の一流ピアニストたちと共演を重ねている。ベリオの作品を奏でる辻のヴァイオリンは、高度な技術的要求をさりげなくクリアしながら、作曲者が意図したであろうサウンドを、敬意をもって、細部まで鮮やかに表現している。「Violin Concerto No. 4」における日の光を浴びて輝く絹糸を思わせるような繊細な音色や、「Scène de Ballet」での軽やかに踊るようなフレージングを聴いてほしい。ミヒャエル・ハラースが指揮するチェコ室内管弦楽団パルドビツェも、抑制の効いた演奏でソリストを引き立てている。シャルル=オーギュスト・ド・ベリオの楽曲を取り上げる際の優れた手本となり得る快作だ。
作曲者
オーケストラ
ヴァイオリン
指揮者