このアルバムには、万華鏡のように多彩で優雅なバッハ作品がたっぷり収録されている。アイスランドの気鋭のピアニスト、ヴィキングル・オラフソンは、バッハが元々鍵盤楽器のために書いた楽曲と、後に続いた音楽家たちが鍵盤楽器のために編曲した作品とを巧みに織り交ぜ、リスナーをバッハの広大な音楽世界を巡る旅へと誘う。ラフマニノフの編曲による"無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006: 第2曲:ガヴォット"では高度なテクニックを披露しつつも愛嬌たっぷりの演奏を聴かせ、ジロティがアレンジした"前奏曲とフーガ ホ短調 BWV855a: 前奏曲 第10番 ロ短調"では胸が張り裂けるような切なさを描き出す。バッハの楽曲の中では耳にする機会が多くない「イタリア風のアリアと変奏 イ短調 BWV989」を素晴らしい演奏で聴けるのも嬉しい。時を超えて人々を魅了するバッハ作品の神秘的な力を改めて感じさせてくれる快作である。
作曲者
ピアノ