本作は、C.P.E.バッハとモーツァルトの鍵盤音楽が、彼らの時代にどのような音で聴こえていたかを再現するというコンセプトを持つ。C.P.E.バッハの「Harpsichord Concerto in D Minor」は大胆で茶目っ気にあふれるが、"12 Variations"はメランコリックさに特徴がある。モーツァルトにも愛らしさと対極にあるような悲しみをたたえた作品があるが、彼の「Piano Sonata No.8 in A Minor」などを聴くと、C.P.E.バッハからの影響を感じずにはいられない。全編を通じてシャニ・ディリュカの美しいピアニズムが聴けるが、なんといっても極め付きはモーツァルトの"Fantasia in D Minor"とC.P.E.バッハの"Andante con tenerezza"の2作品だろう。1790年のWalter製ピアノの復元楽器による音色は、当時これらの音楽がいかに寂しさを表現していたのかを実感できる。