Cyrillus Kreekという作曲家の名前は多くのリスナーにとって聞き覚えのないものかもしれない。だが母国エストニアにおいての彼は、国民的作曲家として広く知られる存在である。エストニアは1918年にロシア帝国からの独立を果たした。Kreekはその独立前後に、母国の民謡を収集・研究してそれらのメロディに和声を施し壮麗な合唱曲に昇華させるという意義深い仕事を成し遂げた。このアルバムにはエストニアで長い間歌い継がれてきた聖歌をKreekが編曲した楽曲と、旧約聖書の詩篇に曲を付けたものが交互に収録されている(一部他の作曲家の作品も含む)。ロシア正教会の伝統的な合唱曲の様式を取り入れつつ、そこにスタイリッシュでユニークなハーモニーを加えた楽曲群はどこまでも清らかで美しい。イントロや間奏に使われる伝統の擦弦楽器ニッケルハルパと撥弦楽器カンネルの響きもこのアルバムの神秘的な音楽に奥深い魅力を加味している。エストニアの声楽アンサンブルVox Clamantisによる情感あふれる一糸乱れぬハーモニーも素晴らしい。
合唱指揮者
合唱団
ハープ
作曲者