Elgar: Sea Pictures. Falstaff

ダニエル・バレンボイムは指揮者として1970年代からエルガーの作品を手掛けてきたが、2010年代にはベルリン国立歌劇場附属のオーケストラであるシュターツカペレ・ベルリンと共に改めてこの大作曲家の作品に取り組み、目覚ましい成果を上げた。そこにはまずバレンボイムによる包容力あふれる大らかなアプローチがあり、これに対してオーケストラが神々しいばかりの演奏で応えるのだ。リスナーは彼らがお互いの音をいかに注意深く聴いているかを感じ取ることができるだろう。そして、母国語が英語でないにもかかわらず『海の絵』をレコーディングした数少ない歌手の一人となったエリーナ・ガランチャの歌声は多彩で情感にあふれ、気品に満ちている。シェイクスピアの戯曲に登場する太った老騎士を描いた、薫り高くたおやかな管弦楽曲『ファルスタッフ』も、豊かな表現と愛情にあふれた格調高い仕上がりとなっている。