米国の作曲家フィリップ・グラスはギターのための作品を書いたことがない。しかし、このアルバム『Escape』でウェールズ出身のギタリストGerard Cousinsが巧みにアレンジしたグラスのピアノ曲や管弦楽作品を聴けば、彼の音楽がいかにギターで奏でるのに向いているのかが分かるだろう。本作では確かにギターがグラスの作品に新たな輝きを与えているのだ。この楽器が持つ親密な響きは「Metamorphosis 3」の催眠的な力をさらに高め、グラスが映画『The Hours』のために作曲したサウンドトラック(オスカーにノミネートされ、英国アカデミー賞を受賞した)の中の短くもエネルギーにあふれる楽曲「Escape!」は、Cousinsの演奏によっていっそう緊迫感を感じさせるものとなっている。一方で「Knee Play 2」(オペラ『Einstein on the Beach』より)は原曲が持つパワーそのままに、止めどない熱狂的な超絶技巧によって奏でられる。そして最後は「Truman Sleeps」(映画『The Truman Show』より)が美しくアルバムの幕を閉じてくれる。グラス作品が持つ技術的かつ音楽的な複雑さを、はっきりと浮き彫りにした魅惑的なアルバム。