バッハの作品の多くは複数の旋律によって構成されており、この異なる旋律(声部)がいかに相互作用して美しい全体像を形成していくかは、バッハを聴く醍醐味の一つかもしれない。バッハはパイプオルガンのために多くの重要な曲を作曲したが、各声部の旋律は楽器の音色の中に埋もれてしまい、聴き逃してしまうこともある。そうした側面にこだわり、この録音では手のこんだ編曲をすることなく新たなバッハ像を提示する。ルター派の賛美歌を題材にした未完のコラール前奏曲集『Orgelbüchlein』をはじめ、さまざまなカンタータからのアリアなどをバイオリン、チェロ、ピアノ、そしてピアノソロに編曲(アルバム名『Three Or One』の由来)したこのアルバムには、原曲を理解するための助けになるような、透明感と静かな遊び心がひそんでいる。非常に美しい音質による録音も印象的だ。
J. S. バッハ:6 Choräle von verschiedener Art, BWV 645-650
Ach bleib bei uns, Herr Jesu Christ, BWV 649 (Transcr. Thomas for Piano Trio)