Mozart Momentum - 1786

ピアニストのレイフ・オヴェ・アンスネスとマーラー・チェンバー・オーケストラは、2021年リリースの『Mozart Momentum - 1785』に続いて本作でも、モーツァルトの人生における奇跡の2年間を掘り下げている。今回スポットライトを当てたのは、モーツァルトが“ピアノの地”と呼んだウィーンに居を構えた1786年。この年、モーツァルトはエネルギーにあふれ、深遠さを極めたピアノ協奏曲や室内楽曲の名作を世に送り出している。アンスネスと演奏家たちの息の合ったアンサンブルは、すべての小節においてモーツァルトが描いた音楽の曲線に本能的にフィットし、輝くような演奏を聴かせている。その結果、モーツァルトの作品の中で最も美しく、胸を揺さぶる楽曲の一つでもある『Piano Concerto No. 23』の第2楽章アダージョは、非常にスリリングな演奏となっており、『No. 23』と同じ月に書かれた『Piano Concerto No. 24』においては、後に続くベートーヴェンの時代を予感させるような壮大さが表現されている。また際立つ力強さと息をのむような繊細さを併せ持つ『Piano Quartet No. 2』をはじめとする室内楽曲も同様に荘厳で、ここではその上質さにふさわしい崇高な演奏で堪能することができる。