パット・メセニー・グループのキーボード奏者として長く活躍した故ライル・メイズの内省的な雰囲気に心が引かれるなら、誰もがこのアルバムを気に入るはずだ。Poetzschは、あたかも即興で作曲する能力や自身の創造性に酔いしれていると思わせながら、物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクの不確定性原理を手掛かりに、独自のイマジネーションを作品に込める。夢幻的である一方で、足でリズムを取りたくなるように進む音楽は、非和声音の多用や低音の持続、重ね合わせたコードなど、付加音で彩られたハーモニーを特徴とする。その結果、予測することも強制することもできないひらめきの瞬間が、時の静止を描いたような音風景の作品集を完成させた。Poetzschは「Stilles Sehnen」(静寂への憧れ)について、「空と海の境界もなく、水平線も見えない」と、想像力をかき立てるようなコメントをしており、これはそのままアルバム全体のメタファーとして捉えることができるだろう。
作曲者
ピアノ