Vicente Lusitanoが1561年頃に亡くなってから2世紀後、当時の伝記作家はLusitanoの母親がポルトガルで奴隷となったアフリカ人だった可能性について触れなかった。ボーカルアンサンブルThe Marian Consortと、その不動のディレクターRory McCleeryは、本作で黒人作曲家として初めて作品を出版したLusitanoの、現存する唯一の作品集『Liber primus epigramatum』から選んだ10曲の聖なるモテットを探求している。これらの楽曲はいずれもLusitanoの音楽が持つ驚くべき革新性や繊細なテクスチャと和音、そして極めて純粋な美しさを示すもので、荘厳な「Emendemus in melius」(トラック7)や「Sancta mater, istud agas」(トラック9)では、それらの特性が存分に発揮されている。また半音階的なメロディがゆっくりと蛇行するような「Heu me, Domine」(トラック6)や、ルネサンス期のポリフォニーを代表する大作の一つである、8声のための「Inviolata, integra et casta es」(トラック10)も聴き逃せない。