Meditations - Chants & Piano

グレゴリオ聖歌とジャズピアノの相性はあまり良くないように思われるが、ドイツのピアニスト／作曲家Tim Allhoffは、その驚くべき独創性と深い精神性でこれらのジャンルを見事に融合した。彼はこの魅惑的なアルバム『Meditations – Chants & Piano』で、そのルーツをキリスト教の初期にまでさかのぼることができる古代の単旋律聖歌のメロディを、絶妙なピアノサウンドで包み込んでいるのだ。Allhoffが生み出すハーモニーは、ミュンヘンのドミニコ会の修道士で音楽家でもあるRobert Mehlhart神父のカリスマ性あふれる指揮の下で発せられる、声楽アンサンブルCantatoriumの男性メンバー6人による清廉な歌声と見事に調和している。本作『Meditations』の端緒となったアイデアは実にシンプルなものだった。Allhoffは西洋の声楽曲の中にあって現存する最も古いレパートリーに、モダンピアノの伴奏を組み合わせたいと考えたのだ。「サイズや自由度を保ったまま原曲をある種の歌曲のような構造の中に組み込みたいと思ったのですが、これは一筋縄ではいかないことでした」と、Allhoffはアルバム制作についてApple Musicに語る。また、それ以前にも大きな課題があった。教皇グレゴリウス1世（540年頃～604年）の時代のものと、もちろんそれ以降のものも含めて、およそ3,000もの聖歌の中からレコーディングする曲をチョイスするという作業だ。彼は一体どのようにして聖歌の分厚い束の中から13曲を選んだのだろうか。「実を言うと、選曲はスムーズにできました。というのも、リズムの構造やメロディがこのプロジェクトに適している曲とそうでないものがあったからです」とAllhoffは言う。「100曲の聖歌を聴き、その中から選んだおよそ20曲の制作に取り組んで、さらに絞り込んで最終的なトラックリストを決めました」。彼は、アレンジの過程では聖歌を聴きながらピアノで即興演奏を行ったと付け加える。「そのようにして一つ一つの曲のハーモニーと構成を練り上げていったのです。最終的にピアノのパートは完全に譜面化しました」Tim Allhoffによる繊細なハーモニーと穏やかにリズムを刻むフレーズは、Cantatoriumの崇高なユニゾンの静けさと集中力を妨げることなく、それぞれの聖歌から新たな一面を引き出している。彼がお気に入りの曲として挙げたのは、神の子羊ことイエス・キリストと聖母マリアにささげられた古代の祈りである「Agnus Dei II」と「Ave Maris Stella」だ。「音楽にはよくあることですが、気に入っている理由を言葉で正確に表現するのは難しいです。ただ、この2曲は個人的に最も感動した曲であり、私の心に直接訴えかけてくるエネルギーを持っているのです」