Bach: The Well-Tempered Consort – III

バッハの鍵盤楽曲をヴィオール（ヴィオラ・ダ・ガンバ）のアンサンブルに編曲した、ファンタズムによる3作目にして最後のアルバムは、まさに極め付きの内容だ。『平均律クラヴィーア曲集』と『クラヴィーア練習曲集第3巻』に収録された対位法の素晴らしさだけでなく、チェンバロやピアノで演奏されると失われがちなフーガでの各声部における入り組んだ情緒性も、優れたアンサンブルと繊細な録音によって浮き彫りにされる。「Wir glauben all' an einen Gott」(Track6) を聴けば、厳格な作曲法に従った音楽から、心からの自由な表現と意外なほどの大胆なハーモニーが生まれることが分かる。さらに、軽快に演奏される「Dies sind die heil'gen zehn Gebot」(Track10) や繊細で優美な「Kyrie, Gott Vater in Ewigkeit」(Track19) からは、バッハの天啓を得たファンタズムの音楽性を感じることができるだろう。