文化の境界を越えることは、楊雪霏(スーフェイ・ヤン)にとって自然なことだ。この中国出身のクラシカルギタリストは、常に多様な起源を持つ音楽をレパートリーの中に取り込んできた。『X Culture』(クロスカルチャー)は、音楽が国境を越えて影響を与え合うことの素晴らしさをたたえるアルバムだ。まずはテイスティングがしたいという人は、ブラジルのギタリスト兼作曲家D. レイスによるワルツ「Se Ela Pergunta」から聴いてみるといい。この曲には、ポルトガルの“モヂーニャ”とアフロブラジリアンの舞曲“ルンドゥ”のエッセンスが含まれている。『X Culture』は、イタリアの作曲家カルロ・ドメニコーニがトルコ風の旋律で紡いだ組曲『Koyunbaba』で幕を開ける。「『Koyunbaba』は西洋とトルコの伝統を融合した神秘的な作品で、リスナーを陶酔させる魅力を持っています」と楊はApple Musicに語る。トルコ語で“羊飼い”を意味するこの曲のタイトルは、トルコの辺境にある呪術的な雰囲気をまとった場所や15世紀の羊飼いの聖人の物語を想起させる。「この曲を再訪すると、幼い頃に演奏した時の記憶がよみがえります。ギターが生み出す新しい音世界が、私のイマジネーションを広げてくれました」。彼女のややダークな音色は、キューバのギタリストで作曲家レオ・ブローウェルが、友人だった日本の作曲家、武満徹をしのんで書いた心からのエレジー、「Hika」にも表れている。「この曲のインスピレーションが東洋から来たものだからかもしれませんが、その音、静寂、繊細な表現に対して、すぐに親近感が湧きました」。そして楊が「中国と西洋の影響を融合させたインスピレーションに満ちた曲」と語る印象派風の小品「Dance of the Orient」は、イギリスのギタリスト兼作曲家であるMark Houghtonが、彼女のために書き下ろした楽曲だ。『X Culture』の最後を飾るのは、大島渚監督による同名の映画のために坂本 龍一が作曲した「Merry Christmas, Mr. Lawrence(戦場のメリークリスマス)」だ。楊は、「この映画は、文化的な隔たりを埋めるというテーマを掘り下げたものです」と言う。「この曲は、同映画のサウンドトラックの中でもとりわけ象徴的なものであり、私は佐藤弘和によるギター編曲版を基に、オリジナルスコアのサウンドにより近づけるべく、7弦ギターを使って奏でました」