「一目惚れのようなものでした」。Karina Canellakisは、2018年の3月に初めてオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団を指揮した時のことをApple Music Classicalに語る。「このようなことはめったにないのですが、私たちはその場で意気投合したのです」Canellakisは現在、同オーケストラの首席指揮者を務めており、これまでにも協奏曲アルバムをリリースしているが、本作『Bartók: Concerto for Orchestra』について、「指揮者とオーケストラとしての私たちの結び付きを示す、初めての真に完全なアルバムです」と説明する。今回バルトークの偉大なオーケストラ作品をレコーディングすることにしたのはCanellakis自身であり、彼女はその難点をよく理解している。「不規則なリズムが多いので、指揮をするのがとても難しいのです」と彼女は言う。「拍子の変化を、技術的に捉えるのではなく、ダンスのリズムとして体に染み込ませる必要があるので、例えばモーツァルトやベートーヴェンの交響曲よりも吸収するのに時間がかかります」。Canellakisはバルトークの『Concerto for Orchestra, Sz. 116』を、25年間にわたって研究し、そして演奏してきた。それ故、この作品を演奏するに際して留意すべき点をよく理解し、それに対応できるようになったという。「例えば終楽章は極めてエキサイティングで、椅子に座っているあなたを宙に浮きあがらせるくらいの、とてつもないエネルギーを持っています。ですので、さまざまなジェスチャーや感情表現、指揮台での存在感などが過度なものにならないようにするのが難しいのです」と彼女は言う。「オーケストラの中で起こっていることが多ければ多いほど、指揮者には嵐の中で平静を保つような“最小限主義”が求められます」彼女は、この『Concerto for Orchestra』について、ある意味ではオーケストラの腕を見せるための作品であり、ソリストたちにも、オーケストラのセクションにも、輝きを放つ機会を多く与えてくれるものだと付け加える。一方で彼女は、この協奏曲がバルトークの深遠な自伝的作品でもあることも強調している。ここには、1940年に戦火を逃れてハンガリーからニューヨークに移住したものの、異国の地で大病を患い、孤独にさいなまれていた時期のバルトークの内面が描かれているのだ。「この協奏曲には、バルトークが抱いた絶望と切なる願い、そして彼が陥った極度に個人的な闇を目の当たりにする瞬間があります」 とCanellakisは示唆する。「そういう意味では第3楽章『Elegia』がこの作品の中心部であり、ここでは非常に情熱的で思慕するようなメロディを聴くことができます」Canellakisが『Concerto』とのカップリング曲として選んだ『4 Orchestral Pieces, Sz. 51』にも、ダークな要素がつきまとう。これは『Concerto』に先んじること約20年、1921年に作曲されたものだが、Canellakisはこれを「初期のバルトーク」といった類いのものではなく、「すでに偉大だった作曲家」の作品と捉えている。Canellakisは、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団が、これらの作品によってもたらされる大きな課題に立ち向かったときの姿に、喜びを感じているようだ。「予想通り、楽団員たちはそれほど苦労していませんでした」と彼女は熱く語る。「私がこのオーケストラを愛している主な理由の一つは、楽団員たちが、素早くて、賢明で、機敏であることです。だいたい1日あれば何でも把握してくれるので、ただただ楽しく演奏できる段階へとすぐにたどり着けるのです」