Sibelius: Karelia Suite, Rakastava & Lemminkäinen

長きにわたって他国に支配された後、1917年に独立を果たしたフィンランドでは、19世紀の終盤に民族主義の機運が高まっていた。本作に収録されているのは、フィンランドを代表する作曲家の一人であるシベリウスが1890年代に作曲した三つの管弦楽曲だ。1893年の組曲『カレリア』はロシアとの国境付近に広がる自然豊かな地域、カレリア地方に伝わる民話にインスピレーションを得た作品であり、1893年から1896年に作曲されて後に改訂された組曲『レンミンカイネン』はフィンランドの民族叙事詩に基づいている。そして、弦楽オーケストラとティンパニ、トライアングルのための作品『恋する人（ラカスタヴァ）』も、フィンランドの叙事詩『カンテレタール』に寄せた男声合唱曲をシベリウス自身が改作したもの。このような題材を選んでいること自体が、そのままシベリウスの民族主義的な着想を反映しているといえる。これらの楽曲を奏でるのは、シベリウスが自ら指揮して多くの自作曲を共に奏でたヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団と、2016年に同オーケストラの首席指揮者に就任し、それ以降バルトークの演奏でも高く評価されているスザンナ・マルッキ。マルッキとオーケストラはこのアルバムで、100年以上前、母国の独立に向けてフィンランドの人々に大きな力を与えた大作曲家の名曲に、新鮮な息吹をもたらしている。