フローレンス・プライスの音楽に対する再評価の波が高まり続ける中、わくわくするような演奏で彼女の曲を奏でるラガッツェ四重奏団のこのアルバムも、その潮流にさらなる勢いを付けるものとなるだろう。プライスは生前においても完全に無視されていたわけではなかったが、彼女の高い音楽性にふさわしい名声を与えられていたとは言えない。本作で聴ける1935年の『String Quartet No. 2 A Minor』のような作品は、プライスが並外れたイマジネーション、優れた技術、ドラマチックなセンスを持つ作曲家だったことを証明している。アフロアメリカンによるスピリチュアルやアフリカ由来の舞曲、そして、クラシック音楽の伝統に敬意を払いながらそれらを自然に融合したこの楽曲は、実に滋味深い。この音楽のリズムと豊かなハーモニーを慈しみながら楽曲の機微を丁寧に描き出すラガッツェ四重奏団のパフォーマンスも見事なものだ。 一方、ドヴォルザークがアメリカで活動していた間の1893年に書いた“アメリカ”こと『弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調』もスピリチュアルのエッセンスを取り込んだ作品。つまり、アメリカのルーツミュージックとクラシックを融合するというアイデアを、チェコからやってきた大作曲家が現地アメリカの作曲家たちに先んじて形にしていたことは、音楽史的な側面から見ても興味深い。そしてここでも、ラガッツェ四重奏団の演奏は、温もりとユーモアと優美さにあふれている。 ラストに収録されているのは、現代アメリカのシンガーソングライター、Rhiannon Giddensのナンバーを弦楽四重奏のための編曲したもの。この曲は本作のパワフルなコーダとしての役割を果たしながら、アルバムのプログラムをより説得力のあるものにしている。
作曲者
弦楽四重奏