女性が作曲家や演奏家としての仕事と家庭を両立させることなどほとんど不可能であると考えられていた時代にあって、リタ・ストロールは際立った人物だった。1865年にフランスで生まれたストロールは、当時の社会に広く深く根付いていた母親という存在に対する過剰な要求に応えて子どもたちを育てながら、一連のロマン主義的な楽曲を生み出していった。例えば、初期の『Grande Fantaisie-Quintette』『Deuxième Trio』といった楽曲は、セザール・フランクやサン=サーンスからの影響を明確に感じさせながらも、堂々たる作品であり、彼女がすでに高度な作曲技術を持っていたことを証明している。
しかし、19世紀末になるとその作風は急激に変化し、彼女自身も書き遺している通り、ストロールは「自分と同じ時代」の音楽と呼応するようになる。1898年に書かれたピアノ、チェロ、クラリネットのための三重奏曲『Arlequin et Colombine』の流麗なメロディと洗練されたハーモニーは、彼女の音楽がフォーレの影響を受け始めたことをはっきりと示している。そして、その5年後の1903年に作曲されたソロピアノのための『Musiques sur l’eau』は、ラヴェルのピアノ曲を思わせる。ストロールが“六音音階”と呼んだ全音音階に基づくこの作品では、彼女は印象主義的な表現方法を全面的に取り入れている。同時にこの作品は、彼女がようやく自分にふさわしい芸術性に到達したことを象徴するかのようでもあり、彼女の音楽がそれまでには不可能だったレベルに飛躍したことを示している。
さらに、このアルバムのレコーディングに参加した演奏家たちの確かな技術と、楽曲への深い敬意が結実したパフォーマンスは見事で、ストロールの知られざる作品の魅力を余すところなく伝えている。