「このように並外れて素晴らしいソリストたちと音楽作りができることは、とてもうれしく光栄なことです」と現代イギリスの作曲家アンナ・クラインは語る。実際、クラインの作品は同時代の多くの演奏家たちに広く深く愛されており、彼女の作品のみで構成された本作に、チェリストのヨーヨー・マ、マンドリン奏者のアヴィ・アヴィタル、ヴァイオリニストのペッカ・クーシストといったソリストたちが参加していることからも、それが紛れもない事実であることが分かるだろう。また、指揮者のエリック・ジェイコブセンが率いるニューヨークのオーケストラ、ナイツも、彼女の古くからの音楽仲間であり、このアルバムにおいても重要な役割を果たしている。 本作『Shorthand』に収録されている4曲は、すべて弦楽器のために書かれた作品。「私は弦楽器のための曲を書くのが大好きで、チェロは私の音楽の中心にある楽器です」とクラインは言う。アルバムの幕開けを飾るタイトル曲「Shorthand」でチェロを奏でるのは、現代チェロ界のスーパースター、ヨーヨー・マだ。 クラインは『Three Sisters』を書いている時、アヴィ・アヴィタルに会って、マンドリンならではのテクニックを教えてもらった。「私はコラボレーションを好む作曲家なので、自分が書いている曲を演奏してくれる人から情報を得ずにはいられません。それは作曲のプロセスにおいて本当に好きな部分でもあります」と彼女は言う。2人の共同作業の成果は、『Three Sisters』の終楽章におけるリズムの展開によく表れている。 クラインは、エレクトロニクスを取り入れた作品も書く一方で、フォークミュージックも愛しているという。2012年に作曲された『Prince of Clouds』は、幻想的な雰囲気の中で、ヴァイオリンが時折フィドルのような響きを発するのが印象的な作品だ。 「Within Her Arms」は、2008年にクラインの母が突然亡くなった後、母を近くに感じたいという思いと、安らかさを求める気持ちから作曲された。クラインは、弦楽器のための15のパートから成るこの曲を演奏する際、曲のモチーフがリスナーの周りを動き回るようにするため、演奏者の配置場所を定めている。このことは、レコーディングに当たってエンジニアに大きな課題を与えることになったが、クラインが長年仕事をしてきた優秀なエンジニアと空間オーディオの技術によって、彼女自身が感激するほどの仕上りとなった。「メロディが、アンサンブルの中で本当に動いて踊っているようです」
作曲者
オーケストラ
指揮者
チェロ
マンドリン