雄弁なヴァイオリンが、楽曲の主人公のキャラクターやさまざまな思いを鮮やかに表現する。アルバムの冒頭を飾る『Blue Electra』は、アメリカの名ヴァイオリニスト、アン・アキコ・マイヤースが、グラミー賞®受賞などで高い評価を受ける同国人の作曲家、マイケル・ドーガーティに委嘱したもの。ヴァイオリンとオーケストラのために書かれたこの作品は、20世紀前半アメリカの伝説的な飛行士、アメリア・イアハートの人生に着想を得ている。高度な技巧の中に伝統的なアメリカ音楽のエッセンスを盛り込んだヴァイオリンのフレーズは、オーケストラの演奏と一体となり、楽章ごとにイアハートの異なる心情を描き出す。他の二つの収録曲もドーガーティが“飛行”をテーマに書いた楽曲だ。管弦楽のための作品「Last Dance at the Surf」は、ロックンロールの創始者の一人であり、絶頂期に飛行機事故で亡くなったシンガーソングライター、バディ・ホリーに捧げられたもの。そして、ソプラノと管弦楽のための作品『To the New World』は、アポロ11号の月面着陸を題材にしている。第1楽章「Moonrise」には、ケネディ大統領による「我々は月に行くことを選択する」というスピーチやカウントダウンの、そして第2楽章「One Small Step」には、アームストロング船長による名言「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」の記録音声も含まれている。第3楽章「Splashdown」からは、地球への帰還に伴う激しさや危険と、着水の成功に安堵(あんど)する気持ちが感じられる。