オーケストラの鮮やかで壮大な響きが、太陽系をめぐる想像の旅へとリスナーをいざなう。アボリジナルの作曲家でソプラノ歌手Deborah Cheetham Fraillonは、メルボルン・シンフォニー・オーケストラ(MSO)の委嘱を受けてソプラノとオーケストラのための作品「Earth」を書き下ろした。MSOがFraillonに依頼したのは、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストの『惑星』を補完するべく、地球を題材にした楽曲を書くことだった。ホルストによるこの歴史的名作は占星学にインスピレーションを得て書かれたものであり、七つの楽章はそれぞれ「火星」「木星」「金星」などの惑星が持つ、占星学上のキャラクターを反映した曲想となっている。そして、占星学という学問が地球から見た天体の状態を対象にしたものであるため、ホルストの『惑星』に「地球」という楽章はない。Fraillonは「Earth」の作曲に際して、『惑星』で描かれている星々と地球との最も顕著な違いの一つは人間がいるかいないかであると考え、この曲に人間ならではのツールである言葉による歌詞を寄せ、オーケストラに人間の声によるソプラノのパートを加えた。こうして彼女は、親しみやすいメロディと神秘的かつ幻想的なオーケストレーション、そして地球本来の美しさを高らかに歌い上げるかのようなソプラノによる、光輝に満ちた楽曲を生み出したのだ。このアルバムは、2024年の3月にメルボルンで行われたコンサートのライブ録音であり、「Earth」はホルストの『惑星』に続くフィナーレとして収録されている。100年の時を隔てたイギリスとオーストラリアの作曲家による、実に興味深い“コラボレーション”だ。
作曲者
オーケストラ
ソプラノ
指揮者
合唱団