大胆で、奔放で、表現力豊か。このアルバムに収録されているドビュッシーの弦楽四重奏曲は、他の多くの演奏がそうであるような、輪郭があいまいで、幻想的で、印象派風の趣のものとは一線を画している。ベルチャ弦楽四重奏団がこのフランスの作曲家による『弦楽四重奏曲 ト短調 L. 85』を初めて録音したのは2001年のことだったが、メンバーを一部変更して再びこの作品に挑んだ本作での演奏は以前よりも率直であり、また作品の性格描写も円熟味を増したものとなっている。彼らのパフォーマンスには粗いところが一切なく、軽やかかつ活気に満ちた第2楽章「Assez vif et bien rythmé」は、統制のとれた、それでいて繊細なニュアンスにあふれたこのカルテットの演奏の特長をよく示している。そして、穏やかな第3楽章に見られる深みのある表現や、豊かで美しいフレージングは、これまでのベルチャによるどの録音よりも見事だ。
同曲の性質を踏まえて聴くと、シマノフスキによるあまり広く知られていない二つの弦楽四重奏曲は、このドビュッシーによる先進的な弦楽四重奏曲の流れを自然に受け継いだ作品のようにも感じられる。そしてベルチャは、これらシマノフスキの作品に潜むエロチックな雰囲気を見事に引き出している。『弦楽四重奏曲 第1番』は、まるで大きくて官能的なため息のように始まり、それに続く音楽からは、熱烈なワグネリアンだった時期を過ぎた後に残った憧憬(しょうけい)のような要素が感じられる。その思いは、穏やかな第2楽章の冒頭で奏でられる魅惑的な愛の旋律に昇華されていくかのようだ。そして、シマノフスキがこの弦楽四重奏曲の最後に置いた、緊張感に満ち、奇怪な趣で、どこか調子が外れているかのような舞曲も、巧みに演奏されている。
ポーランドの民族音楽から着想を得た『弦楽四重奏曲 第2番』は、バルトークを思わせる領域にまで踏み込んでいる。また表現主義的な要素も見られ、例えば第2楽章のオープニングが与える恐怖感は、その直後に続く不穏な舞曲の印象を薄めてしまうほど強烈だ。そして終楽章では、ベルチャ弦楽四重奏団が、嘆きに満ちたオープニングから希望の兆しが見えるエンディングへと力強く導いていく。