Requiem: Mozart's Death in Words and Music

モーツァルトによる未完の『レクイエム』の録音は数えきれないほどあるが、本作では他とは一線を画した構成で聴ける。指揮者のマンフレート・ホーネックは、モーツァルトが1791年に亡くなる前に書き上げていた一連の楽章を、それ以外の多様な楽曲や素材によって彩ることで、作曲家のカトリック信仰や死生観を際立たせているのだ。その中には「フリーメイソンのための葬送音楽」や『証聖者の荘厳晩課』の至福に満ちた「Laudate Dominum」、そして美しいモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」といったモーツァルトの楽曲があり、他に葬送の鐘の音や詩、グレゴリオ聖歌の断片なども取り入れられている。そして『ヨハネの黙示録』の一節を朗読するのは、ミロシュ・フォアマン監督による1984年の映画『Amadeus』でサリエリを演じた俳優F・マーレイ・エイブラハムだ。 通常この『レクイエム』は、フランツ・クサヴァー・ジュスマイヤーがモーツァルトの死後に加えた楽章を含む、いわゆる“ジュスマイヤー版”で演奏されるが、ホーネックはそれらの楽章を省略した上で、リスナーの胸を打つ演奏を実現している。彼と演奏家たちはドラマチックな「Dies irae」で畏怖を感じさせ、「Confutatis」ではとてつもなく激しいパフォーマンスを聴かせる。またホーネックの下に集ったソリストたちは実力派ぞろいであり、ピッツバーグ交響楽団とThe Mendelssohn Choir of Pittsburghも、ホーネックの緻密で心をつかむ解釈に対して一貫して見事な反応を見せている。