これは驚くほど見事な『ゴルトベルク変奏曲』であり、スタジオ録音もライブ演奏も含めて、同作品のピアノ版の近年における解釈の中で、最良のものといえるかもしれない。バッハの限りない創意の賜物であるこの変奏曲は時代を超えて人々を魅了してきたが、これほど多くのバッハ作品の録音がリリースされている状況を見ると、私たちは今、バッハの音楽をこれまで以上に強く求める時代に生きているようにも思える。シンプルなアリアに基づく30の変奏から成るバッハの『ゴルトベルク』は時空を超える存在であり、技術的には非常に複雑ではあるが、その印象は美しく完璧な形式によって和らげられている。同時にこの作品には静かな霊性も宿っていて、それが今日においてこの作品を特に意義深いものにしているようだ。 イム・ユンチャンの演奏は普遍性と精神性に満ちたものであり、それは彼の表現の繊細さ、各変奏の本質にふさわしいテンポ設定によって具現化されている。そして、すべての反復の指示を忠実に守っていることからも分かる通り、その根底にはバッハによる壮大な構想への敬意がある。装飾音は明確でありながらも決して過剰にならず、各反復ではフレーズを再解釈し、旋律線を際立たせ、テクスチャーを再構築する驚くべき能力が示されるが、彼が音楽のスピリットを見失うことはない。 イムのパフォーマンスは第1変奏から新鮮な印象を与えるもので、まるで、ようやくこの作品を深く理解するための道を切り開いてくれる新しい版を手にしたかのように感じられる。反復こそが魔法の起きる場所であり、そこに現れるつかの間の装飾からは、彼がバッハの作品を演奏することに大きな喜びを感じていることがわかる。そして複雑なカノン(中でも第18変奏はその好例だ)には、思わず息をのむほどの明晰さがある。 第25変奏も同様だ。“黒真珠”とも呼ばれ、シェイクスピアの作品のように深みとスケールのあるこの変奏に、イムは驚くほど深い色彩と音色をもたらしている。続く第26変奏への移行は無邪気さと優雅さという点でまさにモーツァルト的であり、繊細で輝くような音の連なりによって、先ほどの暗うつな雰囲気はすっかり忘れ去られてしまう。 素朴な“Quodlibet”(よく知られた複数のメロディをつなぎ合わせて一つの曲にすること)である第30変奏は、私たちを最後のアリアへと導く。アリアのテンポはゆっくりとしたもので、より思索的な趣を醸し出し、少々疲れたような雰囲気となっている。それはまるで、西洋音楽史上もっとも驚嘆すべき旅路の一つであるこの作品に添えられた穏やかな後奏曲のようだ。
作曲者
ピアノ