捉えどころがないようでいて不思議な説得力のある弦楽四重奏、語り、そして時には歌声を交えながらつづられるオーディオドラマのようなアルバムだ。本作『Glorious Mahalia』の主人公は、アフリカ系アメリカ人のシンガー、マヘリア・ジャクソン。20世紀半ばに活躍したジャクソンは、不世出のゴスペルシンガーとして称賛を集めただけでなく、公民権運動に大きく貢献したことでも歴史にその名を刻んでいる。本作はそんな彼女の人生に捧げられたトリビュート作品となっている。前半に収録されているのは現代アメリカの作曲家、Stacy Garropによる組曲『Glorious Mahalia』。多様なレパートリーを奏でる弦楽四重奏団、クロノス・クァルテットの繊細で表情豊かな演奏を背景に、ジャクソンの肉声や、彼女と作家のStuds Terkelとの対話をフィーチャーしたこの作品は、静かにリスナーの想像力をかき立てていく。続く「God Shall Wipe All Tears Away」は、Antonio Haskellが作曲し、ジャクソンの歌唱で広く知られたゴスペルで、ここではJacob Garchikによる弦楽四重奏版で演奏されている。アルバムの後半に収録されているのは、Zachary James Watkinsによる組曲『Peace Be Till』。クロノスのメンバーが生み出す多彩な音色と、電子音、サウンドコラージュが独特の音世界を描き出すこの作品では、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの力強い語りも聴ける。
作曲者
弦楽四重奏
アーティスト