モーツァルトのピアノ協奏曲の優雅さと豊かな詩情を一層際立たせる演奏だ。ヤン・リシエツキはポーランド系の両親の下、1995年にカナダのカルガリーで生まれた。幼い頃から非凡な才能を発揮した彼は、今や当代きってのショパン弾きの一人として高い評価を受ける存在だが、2012年にリリースされたドイツ・グラモフォンからのデビュー作はモーツァルトによる二つの協奏曲を収録したものだった。本作はそれ以来のモーツァルトアルバムとなった。今回取り上げたのは“ジュノーム”の愛称でも知られる『ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K. 271』と『ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調 K. 482』。リシエツキは、アルバムの幕開けを飾る“ジュノーム”の勇壮かつ優美な第1楽章で明瞭で輝くようなピアニズムを披露し、リスナーを引き込む。一方、『第22番』の緩徐楽章での彼は、マンフレート・ホーネックが指揮するバンベルク交響楽団が奏でる思いにふけるような雰囲気の冒頭部分の後、得意とするショパンを彷彿させるような深い情感にあふれた演奏を聴かせる。