世界屈指のカウンターテナーIestyn Daviesは、ケンブリッジのセント・ジョンズ・カレッジとロンドンの王立音楽院で学んだ。オペラの舞台やコンサート、そして主要な音楽祭などで高い人気を誇る歌手となったDaviesは、一方でGeorge Benjaminやトマス・アデス、ニコ・ミューリーといった作曲家たちと音楽的冒険心にあふれた取り組みも行っている。ヘンデルの作品の歌唱においても際立った成果を上げてきた。2014年にリリースされた本作は、ロバート A.キングが率いるピリオド楽器によるアンサンブル、The King's Consortと共に、ヘンデルが作曲したオラトリオのアリアを演奏したもので、歌唱を絶妙にコントロールする技術と楽曲が持つ情感の本質を見抜く能力に裏打ちされたDaviesのあでやかな歌声が、惜しげもなく披露されている。中でも、1732年に初演されたといわれるヘンデル初の英語によるオラトリオ『Esther』のアリア「How can I stay when love invites」における軽やかで輝くようなコロラトゥーラは、何度でも聴きたくなるような魅力にあふれている。