デイヴィッド・ラング

デイヴィッド・ラングは現代のアメリカにおいて、その作品が最も広く演奏されている作曲家の一人だ。彼は幅広い音楽様式に精通する博識家でもあり、クラシック音楽の定義をこともなげに拡大した音楽グループ、バン・オン・ア・キャンの創立メンバーとして、20世紀終盤の音楽の形を変革した。1957年にロサンゼルスで生まれたラングは、スタンフォード大学で音楽の学士号を取り、アイオワ大学の大学院に進んだ。そして1989年にイェール大学で博士号を得た（2008年からは作曲科で教鞭を取っている）。彼はその2年前に作曲家仲間であるJulia Wolfeとマイケル・ゴードンと共にバン・オン・ア・キャンを結成し、音楽の境界線を消し去るためにロックやジャズ、実験音楽の作曲家や演奏家を巻き込みながら、現代におけるクラシック音楽の新しいモデルを作り上げてきた。ラングの主な作品はオペラや合唱曲であり、2007年の『The Little Match Girl Passion』では、バッハの名作『マタイ受難曲』のフォーマットを借りながらアンデルセンの童話『マッチ売りの少女』をイマジネーション豊かな合唱曲として再表現している。一方、音楽が静寂を保ち続けるが故にレコーディングすることできない『the whisper opera』（2013年）のように、ある意味で非常に過激な作品も生み出している。また2009年の『(Untitled)』をはじめ、映画音楽の作曲や編曲も手掛けている。