フランツ・クサーヴァー・グルーバー
バイオグラフィー
1787年にオーストリアの貧しい織物職人の息子として生まれたフランツ・クサーヴァー・グルーバーは、世界で最もよく知られる曲の一つを書いたことで、音楽史にその名を刻んだ。「Stille Nacht(きよしこの夜)」である。このギター伴奏付きの賛美歌は1818年のクリスマスイブに急ごしらえされ、その日のうちに、彼が聖歌隊長とオルガニストを務めていたオーベルンドルフの聖ニコラウス教会で初演された。なぜ伴奏がオルガンでなくギターだったのかということについては、教会のオルガンに不具合が発生したからであるともいわれているが、異なる説を唱える研究者もいる。いずれにせよ、小さな村の教会で生まれたこの曲は想像を絶するほど大きな広がりを見せ、やがてビング・クロスビー、エラ・フィッツジェラルド、Elvis Presley、ドリー・パートンといった、歴史上最も有名なポップ歌手たちにもカバーされるようになった。またグルーバーの作品で一般的に知られているのはこの「Stille Nacht(きよしこの夜)」のみであるが、彼は他にも喜びにあふれたクリスマスソング「Welch ein Jubelton」やドイツ語によるテ・デウム、音楽の守護聖人とされる聖セシリアをたたえるミサ曲など、多くの優れた楽曲を遺している。1863年に亡くなるまでグル―バーが聖歌隊長を務めたハラインの教区教会には、“Stille Nacht Museum”がある。