長い歴史の中で育まれてきた中国のルーツミュージックが持つ独特の調べをクラシック音楽の技法の中で生かし、優れた芸術歌曲を多く手掛けた作曲家。コウ・ジ(黄自)は、1904年に現在は上海の一部となっている江蘇省川沙県で生まれ、20代の前半はアメリカに留学。イェール大学などで西洋音楽の作曲法を学んでいる。帰国後は上海音楽学院の前身である国立音楽専科学校などで教えながら作曲活動を行った。管弦楽曲も書いたが、主に知られているのはピアノ伴奏による歌曲。クラシック音楽のスタイルを取りながらも、中国語の響きを大切にし、旋律に伝統音楽のエッセンスを含ませたコウ・ジのエレガントな歌曲は、オリジナリティと普遍的な魅力を兼ね備えている。後に続いた中国の音楽家たちにも大きな影響を与えた。