交響曲第7番 ホ長調
ブルックナーは『交響曲第7番』(1881~1883年)の冒頭部分について、夢の中で授かったものだと語っている。長いアーチを描くようなメロディが天高く昇っていく様をイメージさせるこの主題は、まさに夢見心地だ。だが、やがてそのビジョンは消え、影が落ちてくる。この第1楽章はその夢のビジョンを取り戻そうとするかのように進んでいき、最後にはその努力が報われ、曲は肯定的で輝くようなコーダで幕を閉じる。この曲はある意味で、ブルックナーが抱くローマカトリックに対する熱心な信仰心を感動的に表現したものだが、一方では、彼のふるさとであるオーストリアの田園地帯や森林地帯、居心地のいい村、そして壮麗な修道院への愛も息づいており、遠くにそびえ立つアルプスの姿をも感じさせてくれる。ブルックナーが、彼のヒーローであるワーグナーに死が迫っていることを知りながら書いた第2楽章「アダージョ」では深い悲しみが表現されているが、それはやがて感動的な音楽の中で融解し、最後にはいわゆる“ワーグナーチューバ”によって、ついにこの世を去った大作曲家への賛辞ともいうべき厳粛なフレーズが奏でられる。続く第3楽章は、ブルックナーが親しんだ田舎の舞曲を思わせる「スケルツォ」となっている。第4楽章は彼の終楽章の中で最も軽やかなものとされ、最後には第1楽章の冒頭にある夢のビジョンが再現される。ブルックナーは決して結論を急がない。それ故、彼の交響曲では、休止が差し込まれたり、突然方向が変わったりすることがよくあり、初めて聴く人を困惑させる場合もある。しかし、彼の音楽にじっくり耳を傾ければ、最後には、この長く、紆余(うよ)曲折のある旅が、意義のあるものだったことに気付くはずだ。この『交響曲第7番』の中でも実にさまざまな感情が表現されているのだが、最後には喜びが勝っている。
