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- 2017、12トラック、41分
前奏曲集第1巻
ドビュッシーは、アマチュアのピアニストが弾くことを念頭に置いて、この12曲からなるピアノ曲集『前奏曲集第1巻』(1909~1910年)を作曲した。それ故、多くの曲は技術的に単純なものとなっており、平均的な腕前の演奏者でも、自分で演奏しながらサウンドのレンジや多彩な雰囲気を探求することができるように配慮されている。この作品集には、シンプルな美しさが印象的な「La fille aux cheveux de lin(亜麻色の髪の乙女)」や、ブルターニュ地方にあったとされる架空の都市イスの、海に沈んだ大聖堂の伝説に基づいた、荘厳な雰囲気をまとう楽曲「La cathédrale engloutie(沈める寺)」など、独立した小品として高い人気を誇る曲も収録されている。また、ミンストレルショーのユーモアあふれるパフォーマンスに着想を得た「Minstrels(ミンストレル)」や、ひっそりとして物寂しい「Des pas sur la neige(雪の上の足跡)」、そして荒々しい風が吹く大西洋の情景を描くために高い技術が求められる「Ce qu’a vu le vent d’ouest(西風の見たもの)」など、楽曲の性格もさまざまだ。「Voiles」は全音音階が醸し出す雰囲気と同様にタイトルも謎めいており、男性名詞であるのか女性名詞であるのかを見極めるために必要な冠詞が付いていないため、「ヴェール」なのか「帆」なのかが分からないままになっている。 ドビュッシーの『前奏曲集』について ドビュッシーによるソロピアノのための作品集である『前奏曲集』は、1909年から1913年にかけて作曲され、12曲ずつ2巻に分けて出版された。ドビュッシーは、文学から絵画、古代の遺跡、そして想像上の国に至るまで、自身のさまざまな関心事から導き出される多彩なアイデアやムードを、音楽によるポートレイト、風景画、身近な世界を切り取ったスナップショットとして表現したのだ。ほとんどの前奏曲は4分以内と短いものであり、中には高度な技術を要求する曲もあるが、ほとんどはアマチュアのピアニストが楽しく演奏できるように書かれている。また各曲のタイトルは楽譜の最後のページにまとめて表記されているのだが、これは、曲を奏でる人が標題にとらわれずにイメージを広げることができるように、というドビュッシーの意図の表れだと考えられている。