妖精の女王

Z. 629

シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を翻案したパーセルのオペラ『The Fairy Queen(妖精の女王)』(1692~1693年)は、作曲者の舞台作品の中でも最高傑作の一つとして高い評価を得ている。この作品は、演劇とオペラをハイブリッドしたセミオペラと呼ばれる形式によるものだ。主役は俳優であり、歌手が務めるのはさほど重要ではない役なので、音楽はドラマの展開とあまり関係していない。したがってパーセルはシェイクスピアのせりふに一切曲を付けておらず、彼の音楽は、本来の筋書きにはないもののそれと関連はしている五つの仮面劇の中に収められている。例えば第2幕の「Masque of Sleep」は、ティターニアに夢の準備をさせる。第1幕のハイライトは、酔いどれ詩人が妖精たちになじられながら、詩人Thomas D'Urfey(トマス・ダーフィー)のパロディと思われる口ごもるような調子で、自分が“a scu- scu- scurvy poet”(しがない詩人)であることを認めるという、コミカルなシーンだ。パーセルが作曲した音楽は彼の死後に一度失われたが、20世紀の初頭に再発見され、現在では音楽が付けられた部分のみが上演されたり、録音されたりしている。

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