ジークフリート
4部で構成されるリヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』の第3部に当る『ジークフリート』は、ユーモアと冒険と恋の魔法にあふれた作品であり、この壮大な楽劇の中でとりわけ明るい輝きを放っている。孤児となったジークフリートは、森の奥深くで小人のミーメに育てられ、恐怖の意味を知らずに大人になった。しかし、竜の黄金、眠れる乙女、砕かれた父の剣のかけらによって運命を変えられた彼は、愛と栄光、そして、まだ見ぬ新しい世界へと導かれていく。鳥が秘密を知っていて、竜が宝物を守り、勇気を持って求めれば愛が訪れるという魔法の世界で若き主人公が道を見いだすという『ジークフリート』の物語は、あらゆる面で古典的なゲルマン神話に基づいたものだ。また、これはさらに壮大でダークな物語の一部でもあり、謎のさすらい人たちが若者の旅を見張っており、ジークフリートの継父であるミーメは邪悪な目的を持っている。ワーグナーは、自由意志、勇気、贖罪(しょくざい)といったテーマを、ミーメの鍛冶場の火花、迫り来る竜の不吉な雷、小鳥の歓喜の歌などの森の魔法できらきらと輝く物語に織り込んでいる。そして、ジークフリートは、すべてのオペラの中でテノールが演じる最も強力な役の一つであり、歌手にとって挑戦しがいがあるものであるだけでなく、リスナーにとっても非常にスリリングな、“ヘルデンテノール”の決定版である。 ワーグナーの『ニーベルングの指環』について 4部の楽劇から成るリヒャルト・ワーグナーの『ニーベルングの指環』は、西洋の芸術史における最高傑作の一つである。1848年から1876年にかけて作曲され、1878年に、ドイツのバイロイトにワーグナー自身が作ったバイロイト祝祭劇場において、4夜にわたって初演された同作は、音楽、詩、演劇、視覚効果などのあらゆる要素を結集した総合芸術であり、リッチで、深遠で、普遍的なドラマだ。古代ゲルマン神話に基づくこの作品は、まさに現代の叙事詩であり、ここでは、愛と力、そして、人間と自然の永遠の物語が、圧倒的な独創性、洞察力、そして、情感に満ちた音楽で語られている。
