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- 2004、62トラック、2時間 51分
フィガロの結婚
K. 492、KV492
モーツァルトの『フィガロの結婚』には隠れたテーマがある。それは、このオペラが感情面での核心において、フィガロとスザンナの結婚よりも伯爵夫妻の結婚に深く関わっているということだ。1786年にウィーンで初演されたこの作品のリブレットは、物議を醸したボーマルシェの戯曲『フィガロの結婚、或いは狂おしき一日』(1784年にパリで初演)に着想を得て、イタリアの一流台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテが巧みに脚色したもので、しっかりとした文学的基盤を持っている。オペラの舞台となっているのは、アルマヴィーヴァ伯爵の使用人であるフィガロと伯爵夫人ロジーナに仕える小間使いであるスザンナが、スザンナを誘惑しようとする伯爵のたくらみを阻止し、ついに結婚式を挙げるという“狂気の一日”。小気味いいテンポやコミカルなリズムはボーマルシェの原作によるところが大きく、また伯爵をやりこめる策略を巡らす女性たち(ロジーナとスザンナ)を主役に据えるという革新性もしかりである。この作品のハイライトは、愛の極限を描いた二つのアリア、つまり、思春期らしい衝動に突き動かされたケルビーノが美しいメロディに乗せてすべての女性への愛を歌う「Non so più」と、無視された伯爵夫人が夫の愛情を取り戻すために愛の神に祈る感動的な「Porgi amor」である。音楽として特に独創的なのは、重唱や合唱の楽章だ。モーツァルトは交響楽のテクニックを駆使して、物語の速いテンポに合わせて的確な構造を用意している。発表当時から高い人気を誇った『フィガロ』は、現在でもオペラの最も主要なレパートリーの一つとして広く愛されている。