ソプラノのナディーン・シエラがデビューアルバムで取り上げたのは、北米と南米の新旧それぞれに及ぶ歌の数々。ブラジルの作曲家、ヴィラ=ロボスの妖艶な作品やバーンスタインの傑作「West Side Story」など、収録曲は出身地や信仰などにかかわらず、人間をつなぐ愛を表現する作品に目が向けられている。オペラ「The Rake’s Progress」は、作曲家のロシア出身のストラヴィンスキーが、アメリカを新たな祖国として移住した音楽家であることを浮かび上がらせ、リッキー・イアン・ゴードン作曲の"Stars"は、ニューヨークのハーレムの夜空に美しく輝く星が優しくアメリカをたたえているよう。抜群の歌唱力を持ったシエラと、その歌声を支えるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のアンサンブルも秀逸で、聴き応えのある内容となっている。