ニコラウス・アーノンクールは、1991年にリリースした記念碑的なベートーヴェンの交響曲全集によって、それまでより格段に幅広いリスナー層からの支持を獲得した。一方、その12年後の2003年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とライブ録音した本作に収録されている音源は、聴き慣れた楽曲に対する彼のアプローチの新鮮さを、驚きとともに改めてリスナーに伝えるものとなった。 この録音では、まだベートーヴェンの音楽にハイドンやモーツァルトの影響が色濃く表れていた1790年代の『交響曲第1番』でさえ、新鮮で冒険的な印象を与える。アーノンクールがもたらす最大のサプライズは、この交響曲の冒頭を非常に優しく、リラックスした雰囲気にしていることだろう。彼は、弦楽器によって奏でられる第1主題では張力が強いばねのような雰囲気を醸し出しているが、歌曲のような趣の第2主題を奏でる木管楽器には、ゆったりと一息入れる余裕さえ与えている。そのため、続く展開部の激しさが実にインパクトが強いものとなるのだ。そして、第3楽章において際立っているパンチの効いたオフビートの和音は、華やかに弾けるような終楽章と見事なコントラストを成している。 アーノンクールは『交響曲第7番』でも、ゆったりとしたオープニングで聴衆を安心させつつ魅了し、メインの“Allegro”セクションに向かって、徐々にテンポと勢いを増していく。この演奏を聴けば、ワーグナーが『第7番』を「舞踊の聖化」と評した理由がはっきりと分かるだろう。優雅な第2楽章でさえ躍動感にあふれていて、意外性のあるフーガが登場する部分には、ちょっとしたいたずら心も加味されている。そして、続くエネルギッシュな第3楽章の後、アーノンクールは『第1番』と同様にオーケストラを活気に満ちた終楽章へと導き、最後には観客からの熱烈な拍手と歓声に包まれる。
作曲者
指揮者
オーケストラ