ドイツ生まれで米国を拠点に活躍するバイオリニストAugustin Hadelichは、バイオリン音楽の頂点に君臨するバッハの無伴奏バイオリン曲に敬意と愛情を持ってアプローチしている。しかし、そこには同時に新鮮な響きを生み出そうとする強い意志も存在しているのだ。本作で彼が使ったバロック弓は、フレージングや率直な表現の面で楽曲に自由な広がりをもたらし、この音楽を表情豊かに奏でるHadelichの能力を存分に引き出している。3音や4音の和音を奏でる時の彼の演奏はとても自然で無理のないもので、バッハによる多声部の作法(作曲法)の輝くばかりの豊かさを余すことなく表現している。舞曲の楽章は心ゆくまで躍動し、落ち着いた内省的な雰囲気の楽章では、バッハの音楽が持つ底知れぬ深遠さの本質に迫っている。
作曲者
ヴァイオリン