アルバムタイトルの『31』はシューベルトの享年を表したものであり、本作にはこの歴史的作曲家が最晩年の1828年に書いた最後の3つのピアノソナタと『Drei Klavierstucke, D. 946』3曲が収録されている。3部作と見なされることも多いこれらのソナタはいずれも複雑な楽曲で、高度な作曲技術が施されているのだが、同時に親しみやすいメロディと情感にあふれたものだ。ドイツのピアニストFabian Müllerはロマン派黎明期の音楽を見極め、形式と自由な表現を見事にバランスさせている。『D. 958』の緩徐楽章は特に歌心にあふれ、その雰囲気は『D. 960』の第1楽章にも通じる。一方で楽曲が強い力感と熱情をあらわにする時にも、Müllerは悠々と自身の演奏をコントロールしている。
作曲者
ピアノ