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- 1988 · ヨーロッパ室内管弦楽団、クラウディオ・アバド
フランツ・シューベルト
バイオグラフィー
フランツ・シューベルトは、決して長いとは言えない20年の創作活動の中で、素朴なリート(芸術歌曲)をあらゆる情感を描き出す小宇宙へと進化させ、古典派の交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノソナタを、輝く旋律と創意あふれる構造を融合した壮大な音楽へと発展させた。彼の初期の作品にはモーツァルトへの愛が感じられ、特に『Symphony No. 5 in B-flat major, D. 485』(1816年)によく表れている。この頃までのシューベルトは父親の言い付けに従って教職に就いていたのだが、そこから生じたジレンマがその天才的な作曲能力に火を付けることになり、600以上もの曲を生み出すことになった。中でも歌曲は彼の創作の中心であり続け、『Die schöne Müllerin, D. 795(美しき水車小屋の娘)』(1823年)と『Winterreise, D. 911(冬の旅)』(1827年)という二つの歌曲集では、燃えるようなエモーションがリスナーの心を打つ。また、ソロピアノのための『Wanderer-Fantasie, D. 760(さすらい人幻想曲)』(1822年)をはじめとする器楽曲の傑作もある。そして晩年の作品の中でも、特に『String Quintet in C major, D. 956』(1828年) は、31歳という若さで書いたとは思えないほど、深い情感を持って聴き手に訴えかけてくる。それにもかかわらず、シューベルトの作品の多くは彼の存命中に出版されず、信じられないことに1830年代のウィーンの音楽辞典には彼の名前すら載っていなかった。その偉大なアーカイブの全貌は、後に続いたシューマン、リスト、メンデルスゾーン、そして特にブラームスが、シューベルトの楽譜が出版され、演奏の機会に恵まれるように尽力したことで、ようやく明らかになったのだ。