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- 2022 · ファジル・サイ
ファジル・サイ
プレイリスト
バイオグラフィー
グレン・グールドの演奏がグールド自身を前面に押し出しているように、トルコの作曲家でピアニスト、ファジル・サイも、演奏するすべての楽曲に一聴して彼と分かる音楽の刻印を打つ。そのことは、2016年の『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』における生き生きとしたパフォーマンスや、2020年の『Beethoven: Complete Piano Sonatas』におけるテンポとダイナミクスに対する大胆なアプローチに象徴されている。サイの自由なセンスは、幼い彼に毎日即興演奏をすることを勧めた師匠、トルコ人ピアニストで作曲家のMithat Fenmenによって培われた。作曲の師匠はİlhan Baran(フランスの作曲家アンリ・デュティユーの弟子)であり、ピアニストDavid Levineの下ではレパートリーに対する主観的かつ折衷的なアプローチを身に付けていった。実際、彼の守備範囲はバッハ、ショパン、ドビュッシーから、室内楽、前衛音楽、ジャズにまで広がっており、彼が生み出す楽曲も、それらの多様な音楽から影響を受けている。例えば、2013年の春にイスタンブールのゲジ公園で起きた民衆蜂起への思いが反映された『Gezi Park』(2013~2014年)にはバルトークやストラヴィンスキーの影があり、また、心を揺さぶるソロピアノ曲「Black Earth」(1997年)はトルコ民謡風の曲調の中でジョン・ケージによるプリペアドピアノの手法が生かされている。