

サイモン・ラトルがマーラーの辞世の句ともいわれる作品『Symphony No. 9』を録音するのは3回目だが、本作がベストといえるだろう。この2021年のライブ録音には、細かく張り巡らされた繊細な表現から大いなる心の叫びまで全音域を表現する、バイエルン放送交響楽団の際立った特性がよく表れている。舞曲のような第2楽章では管楽器のディテールが鋭く響き、第3楽章の「Rondo-burleske」では襲いかかるような強烈なリズムが、適度にあざけるような味わいを醸し出している。24分に及ぶ長い別れのあいさつの最終楽章は、心を揺さぶる美しい瞬間に満ちており、特に弦楽セクションはあふれる思いを雄弁に語っている。そしてこのパフォーマンスの機微をもらさず伝える優れた音質も見事なものだ。
2022年10月7日 4トラック、1時間 18分 ℗ 2022 BR-Klassik